眼科医が市販の目薬をオススメしない理由
一部では「眼科医が市販の目薬を使ってはいけないと言っている」という情報が広まっていますが、今回はあえて市販の目薬の活用法についてお話しします。
眼科で出される目薬と違って、市販の目薬には防腐剤が含まれています。
防腐剤を含む薬を日常的に目に入れ続けることは、眼科医の観点から見てオススメできることではないのです。
また、「充血を治す」とうたって販売されている目薬には、特に注意が必要であるといえます。市販の目薬が充血を軽減させる方法は、血管を収縮することです。
つまり、眼球の血管を細く見せることで、充血が軽くなったように見せかけているにすぎません。しかし、疲れ目や炎症・感染症により目が充血するのは、目の不調を解決するために酸素や栄養を血液に乗せて送り込もうと血管が太くなるという、人間の自然治癒力によるものです。
「充血を直す」ということは、この自然治癒を妨げているということになります。
ですから、むやみに市販薬を使って充血を軽減すべきではないのです。
「充血を治せば疲れ目や炎症なども解決する」という勘違いは、症状を悪化させたり長引かせたりといった逆効果の元。
「疲れ目を解消するために目薬をさした、しかし血管収縮剤が入っていた」というミスは、実は私もつい最近まで犯していました。
目薬の選び方
目薬のパッケージのアピール文を見ても、同じような効果ばかりで、どれを購入しても同じように思えますよね。
成分表を見て、しっかりと自分の求める効果を得られる目薬を選びましょう。
コンタクトレンズを着用する方は、もちろんコンタクトレンズ用の目薬です。
充血を抑える
前述したように、充血を抑える成分である血管収縮剤は、眼科医が市販の目薬をオススメしない理由のひとつです。
以下の成分が配合された目薬を避けて考えましょう。
・塩酸テトラヒドロゾリン
・ナファゾリン塩酸塩
など。
角膜にうるおいを与える
ドライアイの改善のためには、以下の成分が効果的です。
・コンドロイチン酸ナトリウム
・フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム
など。
さらに、液体にとろみがあると良いですね。
角膜がうるおうと表面に水分のベールができるので、眼球を保護する役割もあります。
目の炎症を抑える
目の充血は、人間の体が目に酸素と栄養を送るために血管が太くなっていることが原因と前述しました。
他に、目にゴミや雑菌が入ったりコンタクトレンズの具合が良くない場合に、炎症が起きている可能性もあります。
以下の成分が入った目薬を試してみると良いでしょう。
・硫酸亜鉛水和物
・イプシロン-アミノカプロン酸
・グリチルリチン酸ニカリウム
など。
ピント調節の助けになる
かすみ目の原因は、目のピントを調節する機能が弱まり、焦点を合わせるのに時間がかかることです。
かすみ目が気になる方は、以下の成分が配合された目薬をチェックしましょう。
・ネオスチグミンメチル硫酸
・ビタミンB12
など。
目に必要な栄養を補給・代謝を促進
疲れ目の根本的な解決のためには、やはり栄養と代謝が不可欠です。
日常的にパソコンやスマートフォンの画面を見ることが多い方は、以下の成分が配合された目薬を選んでみてはいかがでしょう。
・L-アスパラギン酸カリウム
・酢酸d-α-トコフェロール
・アミノエチルスルホン酸
・ビタミンE
・パンテノール
・塩酸ピリドキシン
・ビタミンB6
・パントテン酸カルシウム
など。
かゆみを抑える
目がかゆいとき、手でこすったりしてはいけません。
角膜に傷がつく・雑菌が入る、などの危険性があるためです。
以下の成分の入った目薬をチェックしてみましょう。
また、かゆみの原因が炎症である場合などは、炎症を抑える成分も効果的です。
・マレイン酸クロルフェニラミン
目薬のさし方・注意点
手が汚れたまま目薬をさすと、雑菌が入って病気の原因となります。
まずは、目薬をさす前にハンドソープで手を洗って清潔にしましょう。
たとえ手を洗った後でも、目薬の容器の口には触れてはいけません。
容器の口は、まぶた・まつげ・眼球などに直接触れることもないよう注意が必要です。
容器に雑菌が付着すると、内部で繁殖し、次回の点眼からは雑菌を目に入れることになってしまいます。
キャップの扱いにも注意が必要です。
キャップから容器へ雑菌が移らないよう、フタの受け側を下に向けず、清潔な場所に置きましょう。キャップの形状が上向きに置くことに向いていない場合には、横向きに置くことになりますが、転がって落下することを防止するためにも水平な安定した場所に置いてください。
目薬を出した後、容器の口から鼻ちょうちんのように目薬の風船ができることがありますね。
これを破裂させるために、口で息を吹きかける行為もNGです。
口から息を吐き出す時には、肉眼で確認はできなくても、無数の菌が同時に出て行きます。
つまり、雑菌を吹きつけているのと同様ということになるのです。
目薬をさした後にパチパチと何度もまばたきをする行為はNGです。
まぶたの中に入れた目薬をじっくりと浸透させるように、目を閉じて静かに待ちましょう。
目からあふれ出た目薬は、そのままにしておくと肌荒れの原因となるため、ティシューなどで拭き取った方が良いですね。
充血を直す市販目薬は、前述したようにあまり日常的に使うべきではありません。
「目に問題はなく充血だけが気になっていて、白目をより白くしたい」という方がどうしても使いたい場合には「ここぞ」という勝負時にのみ使うようにしましょう。
また、血管収縮剤の入った目薬を避けたとしても、市販の目薬のほとんどに防腐剤が含まれているので、こちらは避けようがありません。
多くても1日に3回までを基準と考えましょう。
目薬をさすコツ
なかなか目薬が目に命中しないという方も多いかと思います。
まっすぐ目に向かって目薬が落下してくるように、顔をしっかりと上へ向けましょう。
上を向いているつもりでも、意外と自分が思っているよりも「少しあごを上げた程度」の角度しか作れていないものですから、意識をして、少しオーバーに上を向くくらいでちょうど良いのです。
少し目標を外れて目尻やまぶた・まつげの上などに落ちた場合、顔を傾けて目薬のしずくを目の中に流し込んではいけません。
一度顔の皮膚やまつげに触れた目薬は、もう雑菌に犯されていると考えましょう。
失敗した目薬は一度ティシューなどで拭き取り、改めて点眼に挑戦してください。
目薬を持つ手が安定しないことが失敗の原因のひとつです。
頬骨のあたりに握りこぶしを当て、そこを土台として目薬を持つ手を当てると安定します。
目薬の保管方法
キャップはしっかりと閉めて、中身が漏れ出さないように気をつけてください。
保管場所は冷暗所が最適です。
冷蔵庫でも良いのですが、設定温度によっては目薬が凍ってしまう可能性があるのでご注意ください。
一度凍った目薬は解凍しても成分が分離しているため、使わないようにしましょう。
常温で保管したり持ち歩いたりという場合には、光を通さないケースに入れると良いですね。
目薬の容器の処分方法
市販の目薬の容器は、ほとんどの場合「プラ」というマーク表示がついた「プラスチック製容器包装」に分類されるものです。
お住まいの地域のルールに従って、プラスチック製容器包装として処分することになります。
ごみの収集日や指定のごみ袋などは地域によって違いがありますので、地域広報誌や市役所などで確認をしてみましょう。
容器を捨てる時は、必ず中身が入ったまま捨てることのないよう、使い切るか全て外に出すようにしなければいけません。
筆者の症状
筆者は目が疲れてくると眼球まわりの血管が膨張して、まぶたの上から指で触れてわかるくらいにデコボコになります。
まぶたがピクピク動いているのが鏡で見てわかるくらいに痙攣(けいれん)することもよくありました。
この状況を「何かの目の病気の症状なのではないか?」「異常なのではないか?」と不安に思い、眼科にかかったことがあります。
しかし、診断結果は「単なる疲れ目」でした。
結局点眼薬を処方されたのみだったので、その後、同じ症状に悩むことがあっても「どうせまた目薬が出るだけだろうし、診察代と交通費の無駄!」と考え、市販の目薬を購入してすませるようになったのです。
が・・・。
その後の調べで、「眼科医が市販の目薬をオススメしない理由」の項で触れたように、私のまぶたがデコボコピクピクになることは、私の体が疲れ目をなんとか改善しようと、酸素や栄養をがんばって送ってくれていた結果だった、と知りました。
今回の記事は、個人的に調べたり眼科医に聞いた知識を基にして書いています。
眼精疲労を癒やすには・・・
目薬の他に、疲れ目を癒やす市販アイテムには、冷やすタイプと温めるタイプがあります。
「結局、疲れ目って冷やすといいの? 温めるといいの?」と、疑問に感じたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここまでのお話で「目が充血するのは、体が疲れた目を回復させるために酸素や栄養素を送り込もうと血管が太くなっている」ということがお分かりいただけたと思います。
そして、血管は冷やすと収縮し、温めると膨張するものです。
これらを合わせて考えると、温めれば自然治癒力を後押しして、より早く疲れ目が治ると思えますよね。
しかし「自然治癒力が働き、充血している」ということは、既に血管は膨張していて、血流が必死にがんばっている状態。
そこへさらに熱を加えて強引に血液を動かそうとすると、血液の働きの規則性を失わせることとなり、逆に効率が下がる可能性も考えられるのです。
例えば「カゼをひいたときに熱が出るのは、体内のカゼの菌を退治するためであり、熱を下げる作用のある薬を飲むと、逆に長引いてしまう」という説がありますね。
しかし、体温が上昇すると体力を消耗するので「まずは患者が楽になることが優先である」として「やはりカゼで熱が高いときには氷枕や氷のうで冷やすべき」と語る医師も。
これと同じことが、眼精疲労の充血にも言えるのです。
薬局で尋ねたところ、結局は本人が「冷やして気持ちがいい」と思うか「温めて気持ちがいい」と思うかで判断して良い、とのことでした。
眼精疲労を解決しようと思うなら、眼科医に相談して、ご自分の診察結果を基に処方された点眼薬を使うことが最善策ではあります。
しかし「忙しくて病院に行くヒマがない」「病院にかかるのは怖い」「近所に眼科がない」などさまざまな理由から、なかなか眼科医に相談できない方も多いのではないでしょうか?
そんな方々に、今回のお話が少しでもお役に立てればと思います。